自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【432冊目】畠山武道・大塚直・北村喜宣「環境法入門」

環境法入門 (日経文庫)

環境法入門 (日経文庫)

行政法と同じで、「環境法」という名前の法律はない。しかし、環境法というカテゴリーは、これまた行政法と同じように、法律の「くくり方」として非常に重要なものとなってきている。当然、その背景には複雑きわまりない現代の「環境問題」が横たわっているわけなのだが、実はこの「環境問題」そのものが、いろいろな要素や社会問題がごちゃごちゃに絡まりあったきわめてややこしい存在であり、最近、意識して環境問題に関連する本をいくつかあたっているのだが、読めば読むほど分からなくなるところすらあるのが現実である。

本書はそのあたりのややこしい議論はある程度割り切った上で、環境に関する問題を「公害・汚染防止」「廃棄物処理・リサイクル」「自然保護」「地球温暖化オゾン層破壊等」の大きく4グループに分け、それぞれについて対応する法律の解説を行うというかたちをとっている(グループ名は少々アレンジしてある)。この構成が読み手としてはとても分かりやすい。それは、これらのグループが、国や自治体がたどってきた環境対応の道のりを辿る順序になっているし、行政の前に現れてくる環境問題も、実務的に見てもこうした分け方のもと対応しているためである。

各章ごとに、本書はこれらの環境問題が発生してきた経緯、法整備のプロセスと現状、問題点をコンパクトにまとめており、まさに入門書としてはうってつけの内容となっている。やや「環境原理主義的」「無条件の環境最優先」に傾きがちなところは見受けられるが、現行法に対する問題意識も的を得たものと感じられた。