自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【427冊目】森田朗責任編集「新しい自治体の設計1 分権と自治のデザイン」

有斐閣から全6巻で刊行された「新しい自治体の設計」シリーズの第1巻。

ある意味、タイトルが本書の内容をほぼ集約している。国との関係である「分権」、住民との関係では「自治」、この両方が同時進行しつつあるこれからの自治体のあり方を、さまざまな角度で論じているからである。本書は10の章に分かれており、それぞれ異なるテーマで異なる書き手が書いているが、いずれも、国から自立し、住民と向かい合っていくという、これからの「あるべき」自治体の姿をデザインしようとしているという点では共通している。

ただ、それぞれの章で書かれていること自体は、きわめてオーソドックスで基本的なことが多い。また、そのわりに各章の内容が独立していて、つながりがいまひとつ見えにくいところもある。ひとことでいって、まとまった印象を抱きづらい本であった。書いてあることが間違っているわけではない、むしろ大事なことをとても分かりやすく書いているのだが、それでも読み終わってみると散漫で漠然とした印象が残る。なぜだろう? 客観的にみて各章はそれぞれに充実しているのに。個々の論述のクオリティが、本としてのクオリティに結びついていないような感じがしてならない。