自治体職員の読書ノート

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【418冊目】梅田次郎・福田志乃編著「現場直言! 自治体実行主義」

現場直言!自治体実行主義―分権時代のこころと戦略

現場直言!自治体実行主義―分権時代のこころと戦略

本書の著者は、自治体行政のまさに最前線で活躍してこられた方々ばかりである。本書は、そうした現場の経験からしか生まれ得ない言葉によって語られた「濃い」一冊。理論構成など一切なく、現場の肉声のみで構成されているところに、えもいわれぬ迫力がある。

北川正恭知事の下、三重県政の改革に取り組んだ梅田氏。地域政策プランナーとして現場に飛び込んで神津島村の再生プランを作った福田氏(本書では彼女だけが自治体職員ではないが、その熱意と地域への密着度は並の行政職員をはるかに上回る)。財政という「市役所という現場」で改革に取り組む所沢市役所の肥沼氏。阪神淡路大震災に直面し、その対応と復興に取り組む中で住民との協働を肌身で知った神戸市役所の植松氏。住民協働の先駆的存在である世田谷で、まさに住民協働の現場に身を置いてきた世田谷市役所の折戸氏。さまざまな困難事例から、住民との「合意形成」の現場を語る横浜市役所の浜野氏。

この方々に共通すると思われるのは、実はあきらめず、辛抱強く住民や職員に語りかけていく粘り強さ、そしてその根底にある、相手方への根源的な信頼である。浜野氏が書かれているとおり、相手方を敵視せず、むしろ相手方の視点に立ってみること。その悩みや逡巡、憤りなどを、いったんは共有すること。書くのは簡単だが、これを先の見えない中で粘り強く何ヶ月も、何年も続けていくのは大変である。その中での、もがくような一歩ずつ、一歩ずつの進展の中、気がつくとさあっと明るい光が射してくる。協働や合意形成と、理屈で言うのは簡単だが、その実態はまさにこうした泥臭い現場のプロセスの中にしかないのだろうと思う。

読みやすい本だが、実行するのに簡単なことはひとつも書かれていない本である。そして、本書は本当の意味で、自治体という現場の困難さと、やりがいを感じさせてくれる本でもある。