自治体職員の読書ノート

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【416冊目】クロード・アレグレ「環境問題の本質」

環境問題の本質

環境問題の本質

いまや「エコロジー」といえば向かうところ敵なしといった感すらあるが、その実態は、と問われるとよく分からない部分が多い。地球温暖化も大気汚染も、リサイクルも自然破壊も、何もかもがごちゃまぜになったまま、「エコ」という耳通りのよい言葉にくるまれてしまっている。しかし、これらは本来別々の話であり、問題点も対策も別個に存在するはずである。本書は巷の「環境問題」を科学者の視点で丁寧に切り分け、優先順位と取るべき対策を示した本である。

著者が拠って立つスタンスは明快である。環境問題は「人間優先」であり、エコロジーと経済成長は両立されなければならない、という主張が本書全体の根底にある。その点で、著者は極端な環境原理主義者を否定する。大切なのは、先進国だけのエゴにとどまらず、現在発展過程にあるインドや中国、ブラジルなどを巻き込んだ形で、彼らが合意できるような(つまり、経済成長のプロセスに環境対策を織り込むことができるような)対策を講ずるべきである、とする。

個々の論点に対しても著者の主張ははっきりしている。地球温暖化に対しては「二酸化炭素主犯説」を疑い(ただ、別の理由から大気中のCO2濃度が増えすぎるのは望ましくないとする)、遺伝子組み換え作物については無知ゆえのヒステリックな反応を批判する(重要なのは、これがテロリズムに悪用されないように研究過程をコントロールすることである)。そして、環境問題といわれるさまざまな問題の中で特に優先すべき課題として、第一に「水」、第二に「都市部のゴミ」、次が「エネルギー問題」、そして「遺伝子組み換え作物」、最後に「生態系」を挙げている。ここで気がつくのは、これらは環境問題であると同時に、まず貧困の問題であり、現在の発展途上国が工業化、都市化を進めた際に問題となってくる点である、ということである。特に深刻なのは水資源の確保であり、水の循環が狂っているため毎週5万人が水不足で命を落とし、灌漑用水の不足は世界的な飢餓の引き金となる。前に、墨田区の「ムラセ係長」の雨水利用の取り組みについての本を取り上げたが、あの内容がいかに本質を捉えたものであったか、ここで再確認させられた。

他にも、少々批判の言葉がヒステリックな感じもあるが、非常にロジカルで分かりやすい内容となっている。行き過ぎたエコロジーを理性的に批判し、受け入れてもらうことは非常に難しいと思われるが、それでもあえてそれに取り組む科学者の良心のようなものを本書からは感じることができる。