自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【407冊目】山田真哉「食い逃げされてもバイトは雇うな」

食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉 (光文社新書)

食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉 (光文社新書)

数字とは不思議なものである。単なる無機的な存在に見えるが、実は人をだましたり、たぶらかしたりすることができる。また、ひとつの数字を見せるだけで「見えない部分」まで想像させたり、「そこにないもの」に思いを馳せることもできる。本書は、そうした「数字」の人間的な要素を紹介しつつ、それを「ビジネス」「会計」「決算書」の局面に応用する内容となっている。

冒頭、数字の「4つのルール」が挙げられる。いわく【1】順序がある【2】単位で意味を固定する【3】価値を表現できる【4】変化しない。一見、なんということもない内容に思えるが、実はこれらが「数字のマジック」のタネとなってくるのだから油断がならない。しかし、そもそもなぜこうした「ルール」が「マジック」になってしまうのかというと、おそらくは、それを使うのが人間だから、ということなのだと思う。

たとえば、本書で挙げられている例でいうと、「A 1000円のものを500円で買う」「B 11000円のものを10000円で買う」のどちらが得か? と問われたとき、われわれの多くは感覚的にAを選んでしまうように思うのだが、コンピュータで計算させれば100%がBを選ぶと思われる。つまり、本書ではそこまで書かれていないが、こうした「数字」のマジックには、人間の認知のゆがみの問題が隠れているのである。

もちろん、本書はそんな難しいほうには話をもっていかず、豊富な実例を挙げながら「数字」がうまくなるためのヒントを示し、ビジネスや会計、さらには決算書の読み方といった実践的な内容に進んでいく。非常に面白く、あっという間に読み終わってしまった。ただ、読んでいて思ったのは、会計上は「不正解」であっても人間の心理が「正解」とすることの意味、人間というものの面白さが、実はここには出てきているのではないか、ということ。本書は会計上の「正しさ」のほうに話を進めていったが、もうひとつの進み方があったかもしれないな、ということ。もちろん、本書の進み方が間違っている、ということではないのだが。