自治体職員の読書ノート

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【397冊目】イタロ・カルヴィーノ「宿命の交わる城」

宿命の交わる城 (河出文庫)

宿命の交わる城 (河出文庫)

「宿命の交わる城」「宿命の交わる酒場」がある。いずれも、テーブルを囲んだ人々が、タロットカードを並べることで自らの物語を語る。人々はいずれも言葉を発することができず、語り手である「私」は、ただ並べられたカードの意味を読み取ることによって物語をたどるしかない。そして、カードが縦横に並べられることによってひとつのカードが複数の意味を持ち、その配置の中に、シェイクスピアの「ハムレット」「リア王」「マクベス」等の悲劇や、あるいはオイディプス、ファウストなどの物語が姿をあらわし、やはりカードによって語られる。

寓意に満ちた、たいへん奇妙な小説である。正直、理解できたかと問われればまったく自信がない。カードの配置によって物語が語られていくという構成はメタ物語的でもあるし、逆にタロットカードの布置(コンステレーション)から、織物の模様を読み取るように物語を読み取るという意味では、カードの布置そのものが世界のメタファーなのかもしれない。いずれにせよ、私の物語というものに対する理解、認識の数段上にある作品であることは確か。届かないながらも、カルヴィーノの視線がはるか上空から(あるいは、世界の裏側から)小説というものを眺め、俯瞰していること、カルヴィーノがそのような眼の持ち主であることは感じられた。