自治体職員の読書ノート

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【394冊目】北村薫「冬のオペラ」

冬のオペラ (角川文庫)

冬のオペラ (角川文庫)

自ら「名」探偵と名乗り、「人知を超えた難事件」のみを扱うと宣言する巫弓彦と、その「記録係」を買って出た、本書の語り手でもある姫宮あゆみの活躍を描く小説3篇。前半「三角の水」「蘭と韋駄天」の2篇が、ちょっとした事件しか出てこない軽めの短編なのに対して、後半の「冬のオペラ」は「密室」殺人の出てくるそれなりに本格的な中篇ミステリである。

全体的には、とにかくユーモアたっぷり、明るく透明感のあるトーン。特に「三角の水」で18歳、「冬のオペラ」で20歳の姫宮あゆみがとにかく跳ねるようにアクティブで楽しい。他の作品での女子大生の描き方もそうだが、こういう若い女性(特にワトソン役)を書かせるとこの人は本当に上手い。覆面作家時代に女性作家だと思われていたのもうなずける。

前半の2篇は登場人物紹介がメインといった趣で、トリックは添え物程度。筆の遊びが楽しい。それに対して、やはり本書のメインは「冬のオペラ」だろう。姫宮のペースでついつい明るく楽しく読んでしまうが、実はかなりきっちりしたミステリ仕立てになっている。そして、すべての謎が明らかになるラストは、なんともやりきれない、哀しい終わり方。それまでが明るくさわやかなトーンで来ていたから尚更である。トリックを知って唖然としたことはあるが、ラストでため息が出てしまう推理小説は稀かもしれない。