自治体職員の読書ノート

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【389冊目】北村喜宣「自治体環境行政法」

自治体環境行政法

自治体環境行政法

環境をめぐる自治体の条例整備や制度設計の流れをメインに論じた本。というと、いわゆる環境部局マターの各論的なものかと思えるが、実はそうではない。

そうではない、というのは二重の意味においてである。第一に、環境というテーマはもはや自治体の一部局だけの問題ではなくなってきている。本書にも多くの例が挙げられているとおり、環境に関する基本条例や計画を策定する際の大きなテーマのひとつが、「縦割り」での対応に終始しやすい現状の自治体にあって、いかに他の部局を巻き込み、全庁的な取り組みとしていくか、ということである。言い換えれば、分権改革後の自治体において求められる総合的な行政のあり方が、環境というテーマから問われてくるのである。

第二に、本書は環境に関する条例整備や計画策定、執行等について扱うことを通して、実は行政全般における条例の制定、要綱や行政指導のあり方、計画の策定、市民参加といった共通テーマを見据えている。いわば、一見「各論」を扱うように見せつつ、その奥に普遍的に広がる自治体法務のあり方を論じているのである。

環境というテーマは、考えてみればこうした扱いに実にふさわしい。そもそも先進的な自治体が法との抵触を指摘されつつも独自条例の制定に踏み切るようになった最初のきっかけは、公害問題に対するものであった。その後も、公害に関連する汚染基準の「上乗せ・横出し」問題、アセスメントの導入、市民参加による計画や条例策定の機運などは、多くが環境というフィールドで起こってきた。したがって、環境に関連した自治体の取り組みの歴史を追うことは、すなわち自治体が国頼みの姿勢から徐々に脱却し、いわばやむにやまれぬ状況の中で、独自の条例制定や施策展開に踏み切ってきた試行錯誤の歴史を辿ることにほかならないのである。

したがって、本書は「環境」という皮膜を通して、実は自治体法務のあり方を広範かつ具体的に論じた一冊なのである。内容は非常に具体的で充実しており、実際に存在する条例等に対する評価や指摘も的確。環境のみならず自治体法務全般に関する良質のテキストである。