自治体職員の読書ノート

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【386冊目】山本直治「実は悲惨な公務員」

実は悲惨な公務員 (光文社新書)

実は悲惨な公務員 (光文社新書)

前にもこの方の著書を取り上げたことがあるが、著者は国家?種に採用されたいわゆるキャリア官僚でありながら、退職して人材紹介会社で働く一方、公務員向け転職支援サイトを主宰するというきわめてユニークなキャリアをお持ちの方である。したがって、いろいろな意味で民間と公務員の世界の違いを熟知しており、その強みが本書ではいかんなく示されている。

タイトルは「悲惨な」となっているが、実際にはそれほど「悲惨」な例が示されているわけではない。オンボロ官舎やマスコミのバッシング、一部業務(徴税業務やケースワーカーなど)の(それこそ悲惨な)状況は描かれているものの、主眼となっているのは、タイトルでいえば「実は」のほうである。公務員の厚遇問題や天下り、汚職(最近では大分県教育委員会の例がそうだが)などが起こるたびに批判される役人の体質について、「実際はどうなのか」ということを具体的なデータをもとに検証しているのである。

ただし、本書はいたずらに公務員を庇う本ではない。むしろバッシングに値する点は率直に認め、問題は問題ときちんと指摘している。そういう意味ではとてもフェアである。その上で、本書が提案するのが「叱咤と激励を使い分けた精度の高い『新時代のお役所バッシング』」である。そのイメージとして、著者は「北風と太陽」の逸話をあげる。これまでのお役所バッシングを一方的・感情的で事実誤認を含む「北風」とすると、これからは、公務員が自然に自らの襟を正そうと思うような「太陽」的バッシングである、というのである。

確かに、過度のバッシングがかえって公務員を萎縮させ、必要以上の隠蔽退室や事なかれ主義を作ってしまっているのは、公務員だけでなく誰でも知っている事実である。また、マスコミの報道姿勢の問題もあって、一時的な騒ぎだけやりすごせば・・・・・・という考えにもなってしまいやすい。しかし、これではマスコミが儲かるだけで、公務員にとって(そして、国民にとっても)決して良いことではないだろう。いま、こういうまっとうな論理を主張できる立場にあるのは、ひょっとしたらこの著者のような「昔公務員、今民間」という方だけなのかもしれない。