自治体職員の読書ノート

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【384冊目】本間正明・金子郁容・山内直人・大沢真知子・玄田有史「コミュニティビジネスの時代」

NPOを中心に、いわゆる「コミュニティビジネス」の現状とこれからについて、さまざまな視点で書かれた本。5人の著者がそれぞれ1章を担当している。

さまざまな視点といっても、実は重複している点も多い。というか、本書はいろいろな方向からコミュニティビジネスについて書いているのだが、横たわっている問題にはある程度の共通性があるため、結果として同じような問題点を繰り返し書くことになっているのである。その問題点とは、例えばコミュニティビジネスを担う人々の給料の安さ(どころか、時には身銭を切ってビジネスを行うこともある)、あるいは寄付制度や支援制度など公的サポートの貧弱さや制約の多さ(その背景にある、行政のNPOに対する無理解)などである。

多くはいわば「おカネ」に関連する問題である。NPOコミュニティビジネスが、理想論はともかく現実に「ビジネス」として運営していくために、最低限、ビジネスとして成り立つ「仕組み」すら、ほとんどできていないのが実態である。

そもそもコミュニティビジネスは、その性質上、通常の企業活動のように利潤追求を第一として行われるものではない。むしろ、そうした利益が生まれにくく、市場が成立してこなかったような分野こそがコミュニティビジネスの主戦場である。そのため、財政的な問題が生じてくるのはある意味宿命的ではあるのだが、それにしても、そうした弱点を補強するシステムがあまりにも機能していない。特に、寄付金に対する税控除のような間接的サポートは、制度自体はあるのだがいかにも使いにくく、とても政府が積極的にNPOの活躍を期待しているとは思えない。そのことが、結局は給料の安さや身分の不安定さにつながり、せっかく高い志をもってコミュニティビジネスに携わろうとする若者が、生活が成り立たないためその場を去ったり、あるいは恒常的な低収入状態に置かれるため家庭をもつこともままならず、いわゆるワーキングプア状態に置かれることになる。

だからといって補助金のような直接的サポートは、NPOを「補助金漬け」にしてしまい、自立性を奪うことになりかねない。だからこそ個人の寄付金への税控除のような間接的サポートが重要なのだが、現状の税控除制度は(改善が進んでいるとはいえ)本書で指摘されるとおり、税徴収者側の論理しか感じられず、それによってNPOを活かしていくという政策的発想がほとんど見受けられないような気がする。