自治体職員の読書ノート

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【380冊目】五木寛之「養生の実技」

人間の身体は、ひとりひとり全員が違う。このことが本書の前提にある。従って、その人に本当に適した養生法はその人にしか適用できない、ということが、本書の眼目である。

したがって、もっとも大切なことは自分の身体のメッセージに耳を傾けることである、というのが本書の眼目である。長所や短所、持病は何か、どういう時に体調が崩れるか。予防法は何か。酒やタバコ、食べ物についても、著者は「口に入れて体調が良いものが身体に良いもの」と言い切る。

これらを踏まえた上で、具体的な養生法のヒントもたくさん載っているが、むしろ本書のエッセンスはそうした「養生」を通じて、いずれやってくる死の迎え方、あるいはそれまでの生き方をいかにすべきか、という点を伝えようとしていることにあるように思う。「養生というのは、永遠の命を養うことではない。きょう一日の生命をいきいきと全うすることである」という言葉がそれを表している。長生きすれば良いというものではないのだ。「全生」を説いた野口晴哉の思想に近いものがある。だから、健康に重大な影響をもつストレスに対しても、「その重圧を背負って生きるしかない」「苦しみだけが人生だ」と言う。もはやこれは養生論ではない。人生論である。否、養生とはすなわち生きることであり、そもそも養生論、健康論こそ人生論であるべきなのであろう。