自治体職員の読書ノート

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【374冊目】樋渡啓祐「『力強い』地方づくりのための、あえて『力弱い』戦略論」

「力強い」地方づくりのための、あえて「力弱い」戦略論

「力強い」地方づくりのための、あえて「力弱い」戦略論

本書の著者は佐賀県武雄市長である。それも、「佐賀のがばいばあちゃん」のロケ誘致に成功したことで一躍武雄市をスターダムに押し上げ、その後も「公有車ネットオークション」や「営業部の設置」など、次々にユニークな事業に取り組みつつ、わずか数年で武雄市を全国区の知名度にしてしまった名物市長。しかもまだ30代というから恐れ入る。

本書はその武雄市長が、自身のさまざまな取り組みについて語ったもの。これを読むと、すでに知っていたもの以外も、実にいろいろな取り組みをやっていたことがわかる。高校生の手作りによる市町村合併式典、レモングラス栽培、空いた議場を学習室に変え、おばあちゃんのダンスチームを作り、自販機を赤レンガ調に変えてもらい・・・・・・他にも山ほどある。しかもそれをしっかりと実行に移し、それなりの成果に結び付けているのである。

その秘密が本書ではいろいろと公開されているのであるが、面白いのは「失敗OK」「うまくいかないと思ったらすみやかに撤退」というスタンスだ。大方の役所とは正反対である。たいてい、行政というのは(自分も含めて)「撤退」するのがヘタである。決めたことは滅多なことではひるがえさない。失敗は認めようとしない。ところが武雄市ではその逆をやっている。すると次々にアイディアが出てくる。出てきたものはどんどん試し、うまくいかなければ修正し、それでもダメなら撤収する。これこそ本当のPDCAサイクルではなかろうか。実際、本書でも失敗例がたくさん出ているが、どれも引き際が鮮やかである。ダメだと分かったら執着しない。実にスピーディなのである。

ほかにも「経験がない企画はうまくいく」「情報は発信するところに集まる」「失敗の分析は暗くなるからしない」など、さらりと読めるが実はすごく重大なことがあちこちに書いてある。しかもすごく面白い。意欲があっていろいろやってみたい自治体職員なら、元気付けられ、いろんなアイディアが湧いてくること請け合いである。