自治体職員の読書ノート

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【370冊目】高橋源一郎「人に言えない習慣、罪深い愉しみ」

週刊朝日」「読売新聞」を中心に掲載された書評をまとめた本。

100冊以上の本が取り上げられているのだが、そのセレクションの多彩さもさることながら、読んでいて感激したのは、一つ一つの本に向けるまなざしが実に温かく、丁寧であること。書評というと(自戒も含めて)どうしても粗探しや批判めいたことを一言くらい混ぜ込みたくなり、そうでなければ褒め倒すばかりの安直なものになりがちなのだが、本書はそういう安易なスタンスは当然取らず、一冊の本によって受けた読み手の印象を静かに語りつつ、その本そのものの魅力をじんわりと伝えてくれている。

特にうまさを感じたのは引用の仕方である。多くの書評は、本のあらすじや内容全体を(時には全体の半分くらいを使って)書くことが多いのだが、本書はそういう野暮なことはしない。その代わり、その本の一部をさらりと引用し、それによって全体を語らしめているのである。したがって、読む側は単なる要約を読むのではなく、著者自身の言葉、その雰囲気、リズム、語感といったものを含めて、「その本」自体に(一部ではあるが)触れることができる。しかし、こういう引用ができるためにはどんな読み方をすればよいのか、読む端から細部を忘れていく健忘性読者の私には想像もつかない。

それにしても、こういう本を読むと読みたい本がやたらに増えるのは困ったことである。最近、さっさと引退して読書三昧の生活がしたくてたまらない。