自治体職員の読書ノート

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【361冊目】池波正太郎「鬼平犯科帳(二)」

鬼平犯科帳〈2〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈2〉 (文春文庫)

いわずと知れた江戸の番人、火付盗賊改方長谷川平蔵の活躍を描いた超人気時代劇シリーズの第2巻。実は小説で読むのはこれが初めて。

いや、さすがに面白い。緩急自在のスリリングな展開、平蔵をはじめ登場人物の魅力(特に敵役の盗賊連中がなかなか良い味を出している)、さらにはそれを取り巻く江戸の風景に至るまで、すべてがかちりと噛み合っている。それに、一見おなじような筋書きにみえて、物語がそれぞれに個性をもっている。ワンパターンにはなっていないのである。

特にいまの東京に住む者としては、江戸の町並みが浮かんでくるような情景描写が実にたのしい。平蔵のねじろである本所界隈をはじめ、本書だけでも目黒、谷中、巣鴨、王子、下谷、深川、千駄ヶ谷、小金井等等、まだ「村」にすぎなかった地域も含め、江戸全体を平蔵が縦横に駆け回り、あるいは個性豊かな盗賊どもが跋扈する。川面の風ひとつ、商いの声ひとつとっても、江戸の香りがふんわりと漂ってくる。みごとなものである。

話としてはいずれも面白いが、印象的だったのは「女掏模お富」の哀しいラスト。過去と現在に引き裂かれるお富の心情が痛々しい。