自治体職員の読書ノート

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【347冊目】荻原浩「神様からひと言」

神様からひと言 (光文社文庫)

神様からひと言 (光文社文庫)

問題山積みの中堅食品会社「珠川食品」を舞台に、会議で上司とケンカして「お客様相談室」でクレーム処理に明け暮れることとなったサラリーマン佐倉凉平の奮闘と変化を描く。

どんな企業でもいろんなクレームをつけてくる客というのはいるらしく、その人間模様だけでも十分面白い小説になるのだろうが、本書はそんな安易な道はとらない。むしろ社内の吹き溜まりのような「お客様相談室」の面々がとんでもなくユニークで個性的。特に、一見すると遅刻常習犯で競艇狂のダメ社員だが、クレーム処理は超一流という篠崎が面白い。

クレーム処理の基本からダメ上司の扱い方、ダメ会社での処世術まで、サラリーマンなら誰もが胸に覚えのあるネタをふんだんに盛り込みながら、見事なストーリーテリングで最後まで一気に読ませる。また、凉平の私生活にもしっかりと目を配り、かつてはロックバンドでプロデビューを狙っていた青年の鬱屈と反骨心を鮮やかに描いている。それが一気に爆発するラストは、まあ荒唐無稽といえばそれまでなのだが、ここまでしなければ世のサラリーマンの鬱屈は晴れないということであろう。絶妙のユーモアとペーソスの中に、社会で生きることの厳しさと楽しさを織り込んだ一級のエンターテインメント小説である。