自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【340冊目】奥野信宏「地域は「自立」できるか」

公共経済学の見地から、「地方」と「都市」の断絶状況を論じ、解決策を模索する一冊。

地方と都市の間に格差が広がっているといわれることが多い。しかし、著者によれば、そもそも戦後の日本では、公共投資の配分は「都市への集中投資」と「地方への分散投資」を交互に繰り返してきたのであって、現在は景況の悪化を反映して、経済の建て直しのため都市への集中投資が行われているにすぎないという。

むしろ著者が問題視するのは、かつては「持ちつ持たれつ」の協力関係にあった地方と都市が、今はむしろ意識の断絶状態に陥っているということである。地方から都市に移動した人々の世代が交代して地方とのつながりが薄れ、無理解と無関心、不遇感が双方に充満している。

こうした認識のもと、著者が本書で取り組んでいるのが、地方(地域)にとっての「自立」とはどうあるべきか、というテーマである。そのキーワードのひとつが「多様な自立」。それぞれの地方がその特性や風土に沿ったかたちで、その地方ならではの自立を遂げることの重要性を、著者は主張する。そのために提案されているのが、広域的にはブロック圏単位での自立構想、より小さい単位ではいわゆる「限界集落」対策や、都市機能の集約化によるコンパクトなまちづくりの実践。

全体を通して感じられるのは、とにかく地方の視点に立ち、地方のための方策を親身に考える姿勢である。単なる自治体と国の財源配分論にとどまらず、公共経済学の立場からトータル「地方と都市」問題の対策を考える一冊。