自治体職員の読書ノート

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【337冊目】佐藤優「国家と神とマルクス」

国家と神とマルクス―「自由主義的保守主義者」かく語りき

国家と神とマルクス―「自由主義的保守主義者」かく語りき

著者がさまざまな雑誌などに掲載した文章をまとめた本。

国家の罠」で書かれたような国策捜査の体験から拘置所での読書記録、その後の「国家論」につながっていくと思われる国家に関する思索など、内容は多岐にわたる。中でなんと言ってもユニークなのが、右翼系理論誌「月刊日本」に寄稿した日本国家論と、左翼系理論誌「情況」でのやはり国家をめぐるインタビューが並列されている点。思想的には左右それぞれの両極にある二誌であるが、面白いのは、著者がその両方に対してそれぞれの言葉、それぞれのタームで存分に語り、それでいて自身のスタンスに一本筋が通っていることだ。右翼系の思想で使われる言葉や世界認識と、左翼系での言葉や世界認識は水と油ほど違うのに、著者は軽々とその両方を行き来してみせる。

その背後にあると思われるのが、著者独自の知性のあり方である。それは、単なる知識豊富な書斎の学者の知性とはまるで異なる。もちろんもっている知識の量も質も半端ではないのだが、それに加えて、外交官、インテリジェンス活動家としての、筋肉質の「現場の知性」「行動する知性」があるのである。なお、この点については本書中に引用されている柄谷行人氏の評価が鋭いところを突いていると思われる。

また、著者は保守主義的な自身のスタンスをはっきり打ち出しているが、その割に国家に対してどこか冷めた視線をもっている。そのあたりの種明かしも本書の最終章で行われている。後に「国家論」が書かれるのだが、本書にはその背景というか、著者がそこに至った系譜のようなものがうかがえた。