自治体職員の読書ノート

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【332冊目】ウルリッヒ・ベック「世界リスク社会論」

世界リスク社会論―テロ、戦争、自然破壊

世界リスク社会論―テロ、戦争、自然破壊

国境を軽々と越えて動き回り、広がるのは、何もマネーやファンドばかりではない。「リスク」もまた、いまや国境を飛び越えて一瞬で世界中に広がり、影響を与えるのである。本書で挙げられている「テロ」「戦争」「自然破壊」は、まさにその最たるものであろう。

そうなると、その対処についても国家を超えた枠組みが必要になってくるはずであるが、この点についての取り組みは心細い限りである。テロに対しても国家が取った対応策は、せいぜい入国管理の強化や「テロ国家」への報復といった国家ベースのぶざまなものにとどまるし、自然破壊にしても、なかなか超国家的で有効な対応策は見つかっていないと思われる。本書はこのような状況に対して、「コスモポリタン的国家」あるいは国家をまたいで活動する「サブ政治」等の概念を提示し、グローバル化するリスクへの対応としてのグローバルな超国家的社会を構想してみせる。

なお、本書の前半「言葉が失われるとき」はモスクワでの国会講演、後半の「世界リスク社会、世界公共性、グローバルなサブ政治」はウィーンでの講演をもとにしている。前者はアメリカ同時多発テロのわずか2ヵ月後に行われているためか、テロリズムが話題の中心であり、1996年の講演である後者は環境問題がテーマとなっている。いずれも当時のホットなテーマを取り上げて理論化し、世界リスク社会論という枠組みに落とし込んで解決策を模索しようとするものであり、講演という性質上、非常に具体的で分かりやすく、ベック社会学の入門としては格好の一冊といえよう。