自治体職員の読書ノート

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【328冊目】世良勇「公務員もMBA」

公務員もMBA

公務員もMBA

MBAといえば、経営に関する本を読めば必ず出てくる言葉だが、その実態がどういうものか、これまでなかなかそのイメージをつかめずにいた。たいていの本は、MBAを魔法の杖であるかのように礼賛するか、あるいは親の敵のように批判するかのどちらかだった。

本書もどちらかといえばMBAを(そうではないと言いつつ)どこかで万能視しているように思われ、その点では「礼賛」のほうに入るだろうが、行政への適用という点を前面に押し出しているあたり、参考になる点が多いように思われる。

本書は「転職編」「現職編」の2パートに分かれ、両者が交互に登場するというユニークな構造になっている。「転職編」は、都庁の課長職にいながら定年まで数年を残して退職し、ラーメン屋を開業した「大山」が主人公。彼が同窓生でMBA、経営コンサルタントの「神山」から経営の手ほどきを受け、事業を展開させていくプロセスが紹介されている。一方、「現職編」はひょんなことから「都庁へのMBA導入」という案が立ち上がり、そのために結成されたチームによる議論が中心となっている。行政現場への適用という点では、こちらのほうがダイレクト。ただ、MBAの本領という意味では前者のラーメン起業のほうがその威力を発揮しているように思う。

そもそもMBAというのはひとつのライセンスであり、その知識や思考法もひとつのツールにすぎないのであり、要は使い方ひとつなのだと思う。それをやたらに祭り上げて絶対視する輩がいるから、「MBAは頭でっかち」「理論だけで現場を見ない」などという感情的な反発も起こるのではないか。個人的には、本書で書かれているようなMBAの諸手法や考え方はとても重要だし、学ぶべき点が多いと思う。

ただし、気になるのはそれがあまりにも技法や思考法として完成されすぎてしまうと、「遊び」や「ゆらぎ」や「跳躍」が起こりにくくなり、ものごとの「あいだ」に息づくものを見落としてしまう危険があるのではないか、ということ。学ぶことは大切だが、思考の「余白」まで失わないよう気をつけたい。