自治体職員の読書ノート

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【322冊目】神野直彦・井出英策編「希望の構想」

希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン

希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン

地方分権社会保障、財政制度。わが国で今まさに「うまくいっていない」この3つの課題を、本書では個々に解決しようとはせず、相互に連関するものとしてトータルかつ抜本的に改革しようとしている。

本書の各章は、神野直彦氏の教え子達によって書かれている。いわばこれからの日本を担っていく若き学者たちである。その彼らが描くこれからの日本の姿は、きわめてリアルで地に足の着いたものでありながら、希望と期待の光に包まれているように思える。地方交付税に代わる「地方共有税」の構想。中途半端な保険方式をやめて、税を財源に組み立てられる社会保障制度。国家の債務と資産を管理する「資産・負債管理庁」の設置。いずれも思い切った改革案ではあるが、現状分析と導入の理由付けが明確なため、非常に説得力がある。この閉塞した状況を打開するには、これくらいドラスティックな変化を起こさなければダメなのかもしれない。

そして、個々の構想を結び合わせ、あざやかな全体像を提示しているのが、神野氏による序章「絶望の構想から希望の構想へ」。これは出色の文章である。地方分権社会保障、国家財政のつながりを明らかにし、財政学の見地から今の日本の状況とその向かうべき道を明快に示すもので、短いながら間然とするところがない。この視点、このマスタープランがあるからこそ、各論部分が精彩を放っているのである。すばらしい。