自治体職員の読書ノート

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【317冊目】青木康容編「地方自治の社会学」

地方自治の社会学―市民主体の「公共性」構築をめざして

地方自治の社会学―市民主体の「公共性」構築をめざして

地方自治に関する様々な論考がまとめられている。

公共性と地方自治のかかわりのようなきわめて本質的で抽象的なテーマから、農村政策や山村政策、あるいは福祉男女共同参画など、いわゆる各論的なものまで、多彩といえばきわめて多彩な内容で、地方自治という対象をさまざまな切り口から論じるものとなっている。全体としてのトーンはやや捉えづらいが、あえて言えば、地方自治の現場における公共性のあり方を問い直すもの、と言うことができるように思う。

それぞれの議論はいずれも粒揃いで、総論、各論を問わずなかなか読ませるものがそろっている。副題は「市民主体の「公共性」構築をめざして」とあるが、市民側に求められる点にもきちんと触れており、よくある理想主義的な市民主義論にとどまらず、現場の問題を知った上で一歩先に踏み出そうという意思がうかがえる。実際、本書の著者の方々はいずれも研究畑の方ばかりのようだが、地方自治の現場をきちんと踏まえ、地に足の着いた議論をされているように思われる。リサーチと方法論がしっかりとしているから、上に乗っている議論にブレがない。そのあたりが、本書の「社会学」たる面目躍如たるところであろうか。

ユニークなのは、最後の第3部が、普通の地方自治のテキストであれば冒頭に来ると思われるような、地方自治制度の一般的な解説になっているところ。しかもこれがなかなかコンパクトにまとまっており、特に地方団体の事業として地方公社などいわゆる第3セクターを論じた部分は、類書に比べても充実しているように思われる。なぜこれが本書の後半にあるのかは、よく分からない。全体的に、内容は充実しているが構成の意図がいまひとつよくつかめない一冊であった。