自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【287冊目】谷本寛治・田尾雅夫「NPOと事業」

NPOと事業 (シリーズNPO)

NPOと事業 (シリーズNPO)

この間、わが役所の某係長(直属の、ではない。幸いにして)が「NPOって、要するにボランティアのことでしょう〜」などと大真面目にのたまっていたのを耳にして思わずのけぞってしまったのだが、そんなNPOも、現実には社会を動かすひとつの動力として、いまや不可欠の存在となっている。特に「公共」の分野は、もはや彼らの活動抜きには語れないところまで来ているように思う。

しかし、NPOを論じることは簡単なようで難しい。その形態が多様であることに加え、組織の目的から見ても、NPONPOでない存在がかなり入り混じっており、NPOというくくりだけで論じることにあまり意味がないためである。さらにNPO法人という存在がかなり市民権を得てきており、そのこと自体は喜ばしいことだと思うのだが、半面、法人格を取得していないNPOや非NPOの団体・個人が、なんだか一段劣るもののように扱われることもあり、法人格という一側面が必要以上の意味をもってきているような気がする。

また、前にも似たようなことを書いたのだが、NPOが語られる際に、既存の地縁団体である町内会や商店会、さらには民生委員や社会福祉協議会、PTA、行政の一員であるケースワーカー保健師などとの調和や協働のあり方が、まだあまり議論されていないように思われる。概して、NPOは比較的目的志向性が高い団体である。そのため、すでに同じような目的をもって活動している団体や個人があった場合に、どのようにお互いが「すみわけ」を行い、あるいは「補完」し、あるいは「協働」していくのか、といった要素は絶対に重要になってくると思うし、うまく協力して役割分担していければすばらしい成果につながると思うのだが、なかなかそういう事例は目につきづらく、成功・失敗いずれのケースもあまり共有されることがないような気がする。そのあたりも、私自身これからどうあるべきかを考えていきたいと思うのである。