自治体職員の読書ノート

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【272冊目】林誠「お役所の潰れない会計学」

お役所の潰れない会計学

お役所の潰れない会計学

地方自治体と民間企業の会計方式を比較しつつ、「お役所」式の会計システムについて論じた本。

自治体サイドへの厳しい意見や指摘もあるが、基本的には「民間に見習え」式の議論に対して、公会計の利点を見直し、評価するものとなっている。なかなか高飛車で挑戦的なトーンで、場合によっては勇み足っぽいところもあるが、理屈としてはそれなりにうなずける部分を多く含んでいる。

特に、近年導入が進められている複式簿記については、その内容が必ずしも分かりやすいものではなく、しかも企業と役所では求められているものが違うとして、やみくもな導入を批判し、むしろキャッシュフローの把握や、住民に対する分かりやすさという面で単式簿記を見直すべきとしている。確かに、減価償却や貸倒引当金といった複式簿記の各項目、あるいは貸方・借方といった発想が、果たしてそのままで公的セクターに求められて良いのかは疑問である。複式簿記の導入をいちがいに否定するわけではないが、その意味するところ、ひいては企業会計のシステムやその目的を、導入賛成派の方々がどの程度ご存知なのだろうか。企業会計と公会計の異同について、識者の方々の間ではどの程度明確な認識がなされているのだろうか。あるいは、例えば地方債の発行に際して、投資家が現実に自治体のB/SやP/Lをどのように見て、どの程度参考にしているのか。複式簿記の導入に際して、どうもそのあたりが見えてこないのである。