自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【246冊目】白川道「病葉流れて」

病葉流れて

病葉流れて

自伝的「博打小説」。大学入学と同時に麻雀にのめりこんでいく男の日々を描いている。中盤あたりまでは、その道の先達らによる「博打道伝授」と、その中でアウトローへの道を選ぶ「私」の決意が、後半は、阿佐田哲也の「麻雀放浪記」を思わせる白熱の闘牌シーンがメインとなる。そのため、麻雀を知らないとちょっと手が出づらい小説かもしれない(というか、そもそも読まないだろう)。

麻雀放浪記を例に出したが、読みながらずっと私はあの「坊や哲」や「ドサ健」の世界を思い出していた。闇市の立ち並ぶ終戦直後の焼け野原と、本書の舞台である学生運動華やかなりし時代の違いはあるが(その分、どうしても本書の登場人物のほうが同じギャンブラーでもぬるさを感じてしまう)、それでも博打の深淵の恐怖と魅力、それに魅入られた個性的で強烈な、しかしどこか欠落を感じさせる登場人物などそっくりである。女性にしても、特に「姫子」など、「オックスクラブのママ」を思い出してならなかった。この小説が麻雀放浪記へのオマージュとしての意図をもって書かれたのかどうかは知らないが、少なくともその後裔に連なるものであることは確かだと思う。

それにしても、こういう小説を読んでしまうと麻雀を打ちたくてうずうずしてくるのは困ったものだ。もっとも、勤め人の私が今麻雀を打っても、それは博打にはなりえない中途半端な遊びでしかあるまい。働くことと博打のふたつを中途半端にやろうとする男だけが、この世に居場所を失うという。本書に登場する箴言のひとつである。