自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【219冊目】元吉由紀子「どうすれば役所は変われるのか」

どうすれば役所は変われるのか―スコラ式風土改革

どうすれば役所は変われるのか―スコラ式風土改革

著者は企業変革コンサルタントを行う会社「株式会社スコラ・コンサルト」に所属し、北川知事時代の三重県改革の現場に携わった、いわば組織改革のプロである。本書はその視点から、三重県の改革事例などの具体例をふんだんに取り入れつつ、役所の「改革」について論じた本。

本書では、改革のプロセスをきちんと段階化し、その順番をひとつひとつ踏んでいくことが重要とされている。その段階とは「改革の基盤づくり」「改革の種蒔期」「改革の萌芽期」「改革の成長期」「改革の再生産期」。本書はこれらにそれぞれ1章をあてて、実際の改革事例をあてはめながら具体的に改革の進め方を示している。また、それぞれの段階の中で「一般職員」「管理職」「首長」などのプレーヤーごとに役割があり、各自がその役割を果たすことも大切であるとされる。特に面白いと思ったのは、「変革チャレンジャー」という存在。これは部署や職層、年齢層などにかかわらず、組織の中に点在する、組織改革への関心や意欲を持つ人のことを言う。彼らをうまく見つけ出し、ワーキンググループなどで組織横断的につなげることによって改革の実効性は大きく上がる。しかし、一般に役所が組織改革をする場合、行政改革担当の部署を作って、方針を作って管理職を集めて……と、組織的な単位での対応に終始してしまうケースが極めて多いと思われる。組織単位でしか動けないと、こうした「変革チャレンジャーの発見」という発想はなかなか出てこないし、うまく活用することも難しい。また、これは「現場からの改革」という、もうひとつの重要なポイントを外してしまうことにもなる。

本書を読んで痛感したのは、やはり組織改革を行うにはプロの支援は不可欠であるということだ。熱い思いはあっても、行政にはその工程全体を描き、変革のプロセスを決定していくノウハウがない。それに、行政内部だけで解決しようとすると、例えば首長レベルでの調整や意志決定が必要な場面でも課長や部長のレベルで解決しようとしてしまったり、先ほどの変革チャレンジャーのケースのように組織単位でしか対応できないためのロスも大きい。何より、確信をもって変革のプロセスを踏んでいくことができないのは大きい。行政改革を標榜する部署は必読。