自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【186冊目】アマルティア・セン「不平等の再検討」

不平等の再検討―潜在能力と自由

不平等の再検討―潜在能力と自由

平等概念の多様性、手段として単に所得のみが平等であれば足りるのではなく、「潜在能力」(ここでは、それぞれの人間に備わった機能・能力の集合としての概念としての意味)の多寡が決定的に重要であることなどを論じ、潜在能力の重要なファクターとして「自由」すなわち選択可能性の大切さを指摘している。場合によっては対立概念的に対置されることの多い「自由」と「平等」を、潜在能力という概念を介することで手段と目的の関係に置き直し、貧困対策としての自由の重要性を論じるところはまさにセン経済学の白眉。「格差社会」という名で不平等がこれほど問題となっている現在の日本で、センはもっと評価され、取り上げられてよい存在ではなかろうか。