自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【161冊目】佐々木俊尚「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する」

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)

わずか10年ほど前にスタンフォードの大学院生2人が創り出した検索エンジン「グーグル」は、またたくまにネット社会を席巻し、その頂点に君臨した。本書は、「グーグル」とは何なのか、なぜ単なる検索エンジンであったものがこのように巨大な存在となったのか、その理由をわかりやすくまとめた本である。

ネットユーザーの多くは、グーグルを「単なる便利な検索エンジン」程度にしか捉えていないように思われる。しかし、その奥行きは思いのほか深く、その懐は思いのほか大きいことが、本書を読むとよくわかる。検索エンジンと組み合わせた絶妙の広告システムによる収益構造、新聞を中心とした既存のジャーナリズムの構造や、広告・CMによる広報活動によって支えられてきた大企業の収益構造を、根本的に覆しかねないシステム。これまで「グーグル以前」に成り立ってきた多くの社会構造が、グーグルの存在によっていとも簡単に崩れ去りかねないのである。しかもそれは、人為ではなく一定のアルゴリズムによって支えられた、意思をもたない自動機械なのである。しかし、その機械の仕組みが、世界をひっくり返す「てこの支点」にぴたりとはまってしまったのだ。

ここまで大きな存在となると、グーグルを無視してビジネスを展開することすら難しくなる。皆がグーグルの検索で上位になるよう頭を絞り、「グーグル八分」に戦々恐々とする。その状況を、本書では「司祭」あるいは端的に「神」と言い切ってはばからない。本書の後半では、グーグルを中心とした「監視社会」の到来を予告する。そこでは個人の嗜好から人間関係から主義思想までがすべて把握され、それにマッチする広告が自動的に提示されるのである。

わが自治体も含め、自治体の多くはこの「グーグル革命」に対して驚くほど鈍感なように思う。広報・観光などの自治体情報や、さまざまな手続き関係など、多くの住民がグーグルを使ってまずは調べる時代になってきているのに、である。グーグルの存在を前提とした広報戦略を、われわれはどれほどもっているだろうか?