自治体職員の読書ノート

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【155冊目】青山佾(やすし)「東京都市論」

東京都市論―進化する都市で暮らすということ

東京都市論―進化する都市で暮らすということ

著者は東京都副知事を務め、公共政策や都市政策に詳しい。本書は副知事としての視点を中心に、東京の都市政策について概観している。

区市町村と都道府県の関係というのは、なかなかに難しい。特に私の勤務する特別区(23区)は、水道や消防など(最近までは廃棄物行政も)、特別区以外であれば市町村が行う事務を東京都が担当しており、都市計画上の役割分担も通常と異なり、事務と財源の移管を求める議論がずっと続いている。その中で、そもそも都道府県と市区町村の役割の違いというのは何なのかと考えさせられることも多い。

本書はその点について、東京都と各区市町村がそれぞれ担当すべき事務を「都はメガロポリス」「区はコミュニティ」と簡潔に切り分けてみせる。シンプルだが、言いえて妙である。本書はその「メガロポリス」形成についての考え方を、道路や鉄道、公園などの都市インフラの部分を中心に都の立場から示したものだが、なるほど、広域行政の発想とはこういうものかと思った。とにかく視点が広くダイナミックであり、人や車の流れを大きく捉え、いわば地域全体のデザインを大きく描いている。市区町村の視点とはいろいろな意味で大きく異なるもので、なかなか参考になった。

また、都市への集中投資の流れについては、地方に薄く広く分散投資するよりも、集中投資による波及効果を狙ったほうが効率的であると力説する。東京一人勝ちと揶揄される部分もあるが、著者の考え方自体は公共投資の発想としてはまっとうなものであると思う。しかし、問題はそれがきちんと「波及」しているのか、という点だろう。本書にはそこまでの言及はないが、近年の「地方の衰退」をみるに、どうもうまく波及的効果が及んでいないような気がしてならない。だからといってこれまでのような田中角栄的・土建国家的な分散投資を続けることは考えられないし・・・・・・。都市への集中と地方への分散という二項対立の枠組みで戦後の公共投資は考えられてきたが、そろそろそのパラダイム自体も限界に来ているのかもしれない。