【144冊目】折原一「沈黙者」
- 作者: 折原一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/11
- メディア: 文庫
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本格的なミステリ小説を読んだのはずいぶん久しぶりだ。叙述トリックと言われるジャンルらしいが、なるほど、こういう手もあるのか、という思いで読み終えた。
それにしても、本書だけがそうなのか、最近の本格的なミステリ小説ってどれもこんな感じなのか分からないが、いろいろ戸惑うことも多かった。何より、ミステリという以上、「謎」が小説の中心に置かれ、その解明に向かってストーリーが進行するのは当然なのだが、本書ではその「謎」の成立に必要な骨組みだけが最低限配置され、それ以外の人物造型や心理描写などの「肉」の部分がほとんどそぎ落とされているように感じたのが大きい。人物すらここでは「ステレオタイプ」ですらなく、記号、それも固体識別ができる最低限の記号でしかない。無駄がないといえばそうなのだろうが、骨組みだけで出来ている家のような無気味さを感じてしまった。
まあ、本格ミステリ(と本書を呼ぶべきなのかどうかすら分からないが)について私はまるっきりの門外漢であり、この世界にはかなりクローズドでディープなファンがついているのも知っているので、これ以上の素人の口出しは控えておく。ま、こういう感想もある、ってことで。