自治体職員の読書ノート

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【102冊目】松岡正剛「知の編集術」

知の編集術 (講談社現代新書)

知の編集術 (講談社現代新書)

編集という言葉からふつうわれわれが連想するのは、雑誌や本の編集という程度のかなり狭い概念だと思う。しかし本書では、「編集」というタームを驚くほど広い意味で使っている。著者によれば、例えば料理の段取りを考えることも編集だし、スポーツも、法律も、政治も、行政も、要するに世の中のほとんどのものごとは編集的要素を含んでいるという。本書は「編集」をそうした広い意味で捉えた上で、その考え方や技法を「指南」する、いわば編集術の入門編というべき内容となっている。

「編集」によって取り扱われるのは、情報である。大量の情報を区別し、整序し、方向付け、比較し、ふくらませ、あるいは絞りこみ、その中で単に情報を整理するだけではなく、新たな着眼点を見出し、意味を創出する。既成のものをつなげてゆく中で新たなものが「創発」されるダイナミックなプロセスが、本書の随所に示されている。また、編集でたいせつなのは結果のみならず過程である、ともいう。そして、適切な過程を経るためのさまざまな技法が、具体的かつ明確に説明されている。さらにユニークなのは、時折登場する「編集稽古」なる遊び心に満ちた(遊びは編集に欠かせない要素とされる)練習問題である。これにトライすることで、読者は編集のプロセスについて単に読むだけではなく、文字通り体験することができる仕掛けになっている。

本書を読んで、行政もまた編集の連続であることに気づかされる。基本計画や予算編成、条例制定などから、イベントの実行、広報活動、会議の段取り、さまざまな文書作成、さらには住民との窓口応対や電話応対、ちょっとした庁内調整まで、まさにあらゆる行政実務は、情報同士をつなげあわせ、順序を入れ替え、文脈をみつけるといった編集的行為なのである。そう考えると、日々の業務が今までと違った意味合いを帯びて感じられ、知的なゲームのようにさえ思えてくるのが面白いところである。