【99冊目】池上 惇・端 信行・福原義春・堀田 力 編「文化政策入門」
- 作者: 池上惇,福原義春,端信行,堀田力
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 2001/02
- メディア: 新書
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「文化政策」とはやや聞き慣れない言葉だが、文化に対する政府・行政のアプローチ全般を指すといってよいと思う。本書は、その文化政策についての入門的なテキストである。
かつて文化活動や芸術活動を庇護し、支えてきた王侯貴族等の支配階級が力をもたなくなった現在、国や地方自治体等の公的部門が、企業のメセナ活動やNPO等による市民活動と並んで、文化の担い手として大きな役割を担うようになってきている。しかし、これまでの行政による文化政策はいわゆるハコモノ建設に偏り、文化に対する高い認識や確固とした哲学があったとはいえない状況であった。本書ではそういった状況を踏まえ、様々な諸外国や国内の事例を通じて、企業や市民活動とも連携した新たな文化政策のあり方を論じている。
「文化」という言葉をわれわれはいろんな意味で使っているが、「文化」とは何か、なぜ国や自治体が文化政策に公費を投ずるべきなのかは、考え出すと意外に難しい。そもそも、文化というもの自体、福祉や防災対策等のように直接的な効用が見えづらく、政策評価にもなじみにくい。金をかけようと思えば際限なくかけられるが、ひとつ間違うと単なる税金の無駄遣いとなってしまう。文化政策とは実にとらえどころがなく、人的資源に対する依存性が高く、しかもすぐに効果が出ないものである。しかし言い換えれば、その分だけ自治体としての力量がダイレクトに出てしまう分野であるともいえる。
文化政策をきっちりとやっていくための要素を思いつくままに挙げると、文化に対する高い見識と哲学、長期的な視野に立ったトップマネージメント、文化に対する深い知見・柔軟で自由な発想・行動力を兼ね備えた職員(多数)、適切な規模の施設、支援団体・地域に住む「プロ」等のアドバイザーの存在、NPO・市民活動との密接なパートナーシップなど、かなりハードルが高い。そういう目でわが自治体をみるとまったくお寒い限りなのであるが、それはともかく、文化政策が自治体の総合力を測る試金石のひとつであることは間違いないと思う。