自治体職員の読書ノート

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【76冊目】宇賀克也「行政法概説Ⅰ 行政法総論」

行政法概説〈1〉行政法総論

行政法概説〈1〉行政法総論

行政法については、塩野先生の「行政法Ⅰ〜Ⅲ」をベースに勉強していたが、最近サボっていたら内容を随分忘れていた。しかし、3冊すべて読み返すのはちょっとしんどい。そこで、この機会に別の視点から全体を通読してみようと思い、わりと評判が良さそうな宇賀先生の「行政法概説Ⅰ・Ⅱ」を読んでみることにした。とりあえず、その1冊目。

特徴としては、記述が非常に明晰であり、網羅的なのだが重要な点を重要と分かるように丁寧に解説してくれている。情報量がほどよく絞り込まれており、全体の構造がよく見えてくる。また、重要度によって文字の大きさを変えたり、具体例をピンポイントで挿入してくれたりしており、非常に行き届いている。

行政法、特に総論部分の分かりにくさは、「行政法」と言う具体的な法典がないことに尽きると思う。普通、法律を学ぶにあたっては条文から出発するのがイロハである。例えば民法なら、個々の条文が確固として存在し、問われるのは主に条文中の文言の解釈である。その解釈基準としてさまざまな学説があり、判例が積み重ねられる。法律の学習とはそういうもんだと、私はずっと思っていた。以前、通信教育で法律の講義をいくつか受けたこともあるが、どの講師も「まず条文にあたれ」「条文から出発せよ」「六法をすぐひけ」と口をすっぱくして指導していた。

しかし行政法では、その条文が存在しないまま、抽象的な概念を学ぶことになる。学んでも、今度は個々の個別法にそれをあてはめなければならない。個別法の条文の文言と講学上の用語もバラバラであり、例えば「取消」「撤回」「受理」「届出」「許可」「特許」など、個々の概念の意味するところを正確に理解していないと、個別法へのあてはめすら満足にできない。行政法では判例が重要と言われるが、その判例についても、問題となっているのはある個別法の条文解釈であり、そのどこまでを行政法一般の通則として射程を及ぼしてよいのか、その判断が難しい。本書では、個々のテーマごとに関連する個別法の条文や重要な判例を丁寧に引用し、その射程を示そうと試みてくれている。そのため、かえって以上のような行政法の難しさを自覚することができたように思う。」

行政法は分かりにくいが、本書はそこを、かゆいところに手が届くごとく解きほぐしてくれている。通読用としても辞書代わりとしても使える、なかなか良い教科書だと思う。