自治体職員の読書ノート

読むために書くのか、書くために読むのか。

【71冊目】新藤宗幸「地方分権」

地方分権 (岩波テキストブックス)

地方分権 (岩波テキストブックス)

非常にストレートなタイトルだが、内容もいたってオーソドックスな地方分権のテキスト。ひとつの特徴としては、前半で地方分権一括法に至る経緯を述べた後、 中ほどの4章を割いて、「公共事業」「土地利用規制」「地域福祉」「教育行政」の各トピックについて、いわば地方分権の突っ込んだ「各論」がなされているところ。それによって、前半で論じられた「国の地方への関与」の実態が、具体的に明らかとなるという構造になっている。

個人的に興味深かったのは、「教育行政」について論じた第10章。本来、「教育への民主的統制」を目的に公選制と共に導入された教育委員会制度が、首長による任命制となり、さらには、逆に首長の関与をも退けるかたちで文部省→都道府県教育委員会→市町村教育委員会の強固なラインを形成してしまい、結果として教育行政が「自治の空白」となってしまったという経緯は、皮肉としかいいようがない。
文部科学省の出先機関にすぎないような教育委員会など本当に必要なのか、本来の意義に照らせばはなはだ疑問といわざるをえない。

また、自治体側の怠慢についても厳しい論及がなされている。拘束力のない国の通達はおろか、国の官僚の作成したマニュアル本に依存する職員、オール与党化して機能不全の著しい地方議会、馴れ合いから脱却できない監査制度。そして、一部のいわゆる「先進自治体」と「その他の自治体」の二極分化など、さながら日本の地方制度の「病巣」のオンパレードである。

しかしながら、今後の地方分権推進のためには、地方が行政主体、政治主体としての高い意識と実力を持ち、住民の福利向上のため知恵の限りを絞るべきであり、それを地方のコンセンサスとしなければならないのである。当たり前のことだが、現段階をスタートラインにこれを実行するとなると、われわれ自治体職員には相当の意識改革と自己研鑽が必要となるように思われる。