自治体職員の読書ノート

読むために書くのか、書くために読むのか。

【64冊目】 寄本勝美編「公共を支える民」

公共を支える民―市民主権の地方自治

公共を支える民―市民主権の地方自治


公的部門の担い手は「官」、私的経済活動の担い手は「民」。こうした、社会活動全般で暗黙のうちに認められてきたと思われる役割分担が、ここ数年で大きく変わりつつある。本書は、その「変わり目」の時期に、「民」と公共のかかわりについて、根本的かつ多角的に論じた本である。

指定管理者制度やいわゆる市場化テスト等、ここ数年の「官から民へ」の動きは、主として政府の方針としてトップダウン方式でなされてきた。いわば、「官」による動きである。それに対して、本書で触れられている事例のほとんどは、必要に迫られて「民」の側がアクションを起こし、それに行政がどうかかわってきたかという、「民」による動きであるところに特徴がある。そのため、本書の事例はどれも、結果として「民」が公共の大きな担い手となりながら、行政との協働もうまくいき、地域の実情とも齟齬がない。それは考えてみれば当たり前のことで、地域をもっともよく知る住民が主体となり、必要性にかられて動いたのだから、地域の都合に沿った活動にならないほうがおかしい。そして、結果として「公共を支える民」のありようは地域ごとに大きく異なり、いわばその地域にぴったりあった衣をつけることができている。この点が、すでにあげた「トップダウン型」の民間化の動きとはまったく異なる。そして、どちらがそれぞれの地域にとって望ましいかハ明らかである。

ただ、こうした「草の根型」の民による公共的活動を実現するには、さまざまなハードルがあることも確かである。その具体的内容は本書の至る所で提示されている。ひとつ指摘するなら、「行政」と「住民」が対立状態になってしまうと、民による公共的活動は非常に難しくなる。そうならないためには、お互いが相手の役割を尊重し、一定の自制を働かせること、特に(本書での実例をみると)行政がでしゃばらず、邪魔しないことが大事らしい。言い換えれば双方が「大人」であることが必要なようである。