自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【57冊目】甲野善紀・内田樹「身体を通して時代を読む」

身体を通して時代を読む (木星叢書)

身体を通して時代を読む (木星叢書)

「武術家」甲野善紀と「大学教授で合気道6段」内田樹が、現代社会全般について、おふたりならではの「武術」的視点から縦横に論じた対談である。

扱われているテーマは多岐にわたるが、どこをとっても、とても刺激的で面白い。オビで養老孟司氏が「今、日本で一番面白い二人による対談」と紹介しているが、本当にそのとおりだと思う。もっとも、面白いといってもあえて奇をてらったり、ウケ狙いがあるわけではない。むしろいずれの意見も、中身はまっとうすぎるほどの正論である。ただ、その根拠となる実体験の面白さや巧みな比喩、説得力のある議論の運び方のため、正論が正論としてストンと読み手の胸に落ちる。

また、読んでいて非常に心地よいのが、お互いのお互いに対するリスペクトを感じられる点である。教育問題、環境問題、心の問題など、さまざまなテーマが取り上げられているため、中には意見が異なると思われる部分もあるのだが、そこで自分の意見をごり押しすることなく、相手の意見をきちんと拝聴し、受け止めた上で、それを踏まえて自分の見解を丁寧に述べるという態度が徹底しているのである。当たり前のようであるが、なかなかここまでそれができている対談は少ないように思う。