自治体職員の読書ノート

読むために書くのか、書くために読むのか。

【33冊目】神庭重信「こころと体の対話 精神免疫学の世界」

こころと体の対話―精神免疫学の世界 (文春新書)

こころと体の対話―精神免疫学の世界 (文春新書)

メインタイトルからするとスピリチュアル、ヒーリング系の本かと思えるが、中身はバリバリのサイエンスである。

テーマの「精神免疫学」は、要するに人の精神面と免疫系の関係を探る学問分野である。経験則上、心の持ちようによって病気にかかりやすくなったり治ったりすることがあるというのは分かるが、それが単なる思い込みではなく、科学的なデータに裏付けられ、身体反応としての明確な因果関係のある事象であることが、本書にははっきりと提示されている。

とはいえ、精神免疫学はまだ若い学問であり、分かっていないことも多い。本書の書き方で好感がもてるのは、分かっていないことについて「分かっていない」とはっきり書く節度の高さである。そのため読者は、安易な俗信やオカルティズムに陥ることなく、未知の部分は文字通り未知のままとしつつ、科学者の態度をもってこの面白い学問に接することができる。

化学物質や身体器官の用語が並んでとっつきにくい部分はあるが、文章は総じて明晰であり、丁寧に読めば決して分かりにくくない。内容については、表題どおり「こころと体」の関係をめぐる現代医療の最先端の知見や臨床例に満ちており、知らないことばかりで驚きの連続だった。