自治体職員の読書ノート

読むために書くのか、書くために読むのか。

【25冊目】 石田衣良「波のうえの魔術師」

波のうえの魔術師 (文春文庫)

波のうえの魔術師 (文春文庫)

株式投資の世界を舞台にした作品であるが、とにかくテンポが良い。

なじみのないマーケット用語の連発、株式投資の世界であるため動きの少ない(基本的な戦いの舞台はパソコンのモニター上である)小説であるにもかかわらず、その世界に一気に引き込まれ、違和感なく読み終えることができる。また、投資やそれに関わる人間というものについてのするどい洞察がバランス良くちりばめられ、投資家という「人種」についての素描ともなっている。

「池袋ウェストゲートパーク」など、青春小説のイメージが強い石田衣良であるが、本書はやや趣きが異なる。もっとも、若者の特性が「野心」と「成長」にあるとすれば、本書は本質的に、すぐれた「若者小説」であるといえるだろう。

また、単なる欲得ずくの話に終わらせるのではなく、ターゲットとなる銀行の悪質さを際立たせることで主人公の行為に正当性を与えているため、読後感も、株式投資の世界を描いたものとは思えないほどさわやかである。面白かった。そういえばドラマ化もされたらしいが、納得です。