自治体職員の読書ノート

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【16冊目】ジョン・F. ロス「リスクセンス」

リスクセンス―身の回りの危険にどう対処するか (集英社新書)

リスクセンス―身の回りの危険にどう対処するか (集英社新書)

われわれ自治体職員の業務は、日々さまざまなリスクとの戦いであるといえる。最たるものは防災対策であるが、他にも感染症、防犯、アスベストなど、一定のリスクを扱う業務はかなり多い。また、それ以外の業務においても、住民トラブルや訴訟リスクなど、自治体職員自身に向けられるリスクは存在する。

したがって、自治体職員にとって、リスクに対する知識や考え方を習得することは必須のものといってよいと思われる。 本書はその意味でなかなかすぐれた内容となっている。

分量はコンパクトであるが、確率というものの考え方や歴史にはじまり、さまざまなリスクの存在と意味について多面的にアプローチしており、その中で自然とリスクというものの「扱い方」が分かるようになっている。

その中で随所に触れられているのが、「リスク・ゼロ」という「神話」への誤解だ。住民からの要望や自治体内部での議論において、しばしばみられるのがこの「リスク・ゼロ」を達成すべしという主張である。しかし、通常の社会生活を営むにあたって、リスクを完全に回避することは不可能であることは、本書を読むまでもなく自明であろう。

とすれば、われわれに必要なのは、個々のリスクに対する一定程度の「知識」、それに基づく的確な「判断力」、そして、ある程度のリスクについては回避しえないものとして引き受ける「覚悟」ということになる。思うに、人はこれらを総称して「賢さ」と呼び、こうした行動が取れる人を「大人」と呼ぶのではないだろうか。