自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2冊目】阿部昌樹「ローカルな法秩序」

ローカルな法秩序―法と交錯する共同性

ローカルな法秩序―法と交錯する共同性

法律の本にも2種類あって、ひとつは個別の法律について解説した本。「憲法」「民法」などのタイトルなのですぐ分かる。もうひとつは「法律って何?」という問題についての本で、法社会学法哲学などと位置づけられることもある。本書は後者にあたり、社会学的なアプローチで「法」の存在意義に迫っている。 

専門書なので難しい部分もあるが、実際に起きた事例に即して具体的に論じられているので、「法の道具化」という基本的なロジックは非常に明瞭に伝わってくる。また、それを通じて昨今のいわゆる住民運動のしたたかさや積極性、「反対のための反対」でない建設的な方向性(そうではないものも依然多いが)を知ることもできる。

いずれも、私も含めて多くの自治体職員が見過ごしがちな観点だと思う。住民運動論としても非常にすぐれており、法律や行政実務の基礎的な知識さえあれば、自治体職員にとって得るものの多い本と言ってよいだろう。