自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

歴史・文化・民俗

【2823冊目】小山聡子『もののけの日本史』

もののけの日本史-死霊、幽霊、妖怪の1000年 (中公新書) 作者:小山 聡子 中央公論新社 Amazon もののけ(本文中では「モノノケ」)と言えば、多くの人が思い出すのは映画『もののけ姫』でしょう。 でも、そもそも「モノノケ」ってなんなんでしょうか。 この…

【2803冊目】菊地大樹『日本人と山の宗教』

日本人と山の宗教 (講談社現代新書)作者:菊地 大樹講談社Amazon 山は異界。山中他界。神は山から里にやってくるのであり、人が山に入る時は、それなりの儀式や儀礼が必要。これまで、主に民俗学において、山はそのように捉えられてきました。また、山は修験…

【2784冊目】尾脇秀和『氏名の誕生』

氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書)作者:尾脇 秀和筑摩書房Amazon ややこしくも、大変面白い本でした。苗字があって、名前がある。現代の私たちには当たり前のことですが、実は、江戸時代以前はそうではありませんでした。当時は自分…

【2734冊目】司馬遼太郎『燃えよ剣』

燃えよ剣(上) (新潮文庫)作者:司馬 遼太郎新潮社Amazon 燃えよ剣(下) (新潮文庫)作者:遼太郎, 司馬新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン56冊目。先日の『ひらいて』に続き、こちらも映画化とのこと。新潮文庫100冊、そういう選書な…

【2730冊目】井伏鱒二『黒い雨』

黒い雨 (新潮文庫)作者:鱒二, 井伏新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン52冊目。井伏鱒二の代表作にして、異色作です。他の作品にみられる飄々としたユーモアは影をひそめ、原爆の惨禍が徹底的に、しかしどこまでも客観的に語られます…

【2722冊目】杉浦日向子『一日江戸人』

一日江戸人 (新潮文庫)作者:日向子, 杉浦新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン44冊目。漫画家にして江戸文化案内人の著者による、イラスト付き「江戸ガイド」。江戸人たちの生活事情をリアルに解説し、居ながらにして江戸の生活を感じ…

【2689冊目】こうの史代『ぼおるぺん古事記』

ぼおるぺん古事記 (一)天の巻作者:こうの 史代平凡社Amazon ぼおるぺん古事記 (二): 地の巻作者:こうの 史代平凡社Amazonぼおるぺん古事記 三: 海の巻作者:こうの 史代平凡社Amazon すばらしい一冊、いや三冊だ。『この世界の片隅に』で戦時下の日常を丹念…

【2670冊目】白洲正子『両性具有の美』

両性具有の美 (新潮文庫)作者:正子, 白洲新潮社Amazon 解説で大塚ひかりが書いているとおり、「両性具有」とはいっても、本書に書かれているのはすべて「男性の女性化」としての両性具有の話であって、しかも題材はほとんど日本の歴史や物語からのものである…

【2661冊目】島田昌和『渋沢栄一』

渋沢栄一――社会企業家の先駆者 (岩波新書)作者:島田 昌和岩波書店Amazon サブタイトルに「社会企業家の先駆者」とあったので、ソーシャルアントレプレナーとしての渋沢栄一について知ることができるのではないかと考え、手に取りました。渋沢栄一は社会福祉…

【2656冊目】萩原秀三郎『目でみる民俗神 山と森の神』

山と森の神 (目でみる民俗神)東京美術Amazon 今の日本でもっとも見えづらくなっているのは、この本に載っている写真のようなことではないか。そう思いながら読み、眺めていた。著者が写真に撮り、本書に収めたのは、日本各地で行われているさまざまな祭りや…

【2597冊目】千葉徳爾『日本人はなぜ切腹するのか』

日本人はなぜ切腹するのか作者:千葉 徳爾東京堂出版Amazon 絶版のため図書館で借りたが、これは面白い。どこかで復刊してはくれないか。面白いが、痛い本でもある。とにかく「腹のかっさばき方」がいろいろ出てくる。一文字に十文字、途中でつっかえたらどう…

【2567冊目】吉野裕子『ダルマの民俗学』

ダルマの民俗学―陰陽五行から解く (岩波新書) 作者:吉野 裕子 発売日: 1995/02/20 メディア: 新書 ダルマといえば知らない人はいない、赤くてギョロ目のあの物体だ。そのモデルが禅の始祖、達磨大師であることはよく知られているが、では、なぜかつて実在し…

【2551冊目】加藤徹『貝と羊の中国人』

貝と羊の中国人 (新潮新書) 作者:加藤 徹 発売日: 2006/06/16 メディア: 新書 京劇の研究が専門という著者による中国論。緻密というよりむしろラフスケッチ風なのだが、中国のような巨大で複雑な相手を扱うとなると、このくらい大雑把なほうが全体像をつかみ…

【2540冊目】塩野七生『神の代理人』

神の代理人 (新潮文庫)作者:塩野 七生発売日: 2012/10/29メディア: 文庫 「神の代理人」とは、カトリックの最高位、ローマ教皇のことである。ルネサンス期のローマ教皇のうち4人を描いた本書は、質量ともに単行本4冊分。後年の塩野七生なら内容をもっと膨…

【2536冊目】磯田道史『龍馬史』

龍馬史 (文春文庫)作者:道史, 磯田発売日: 2013/05/10メディア: 文庫 司馬遷が『史記』で創始した、紀伝体というスタイルがある。一人の人間に着目して、歴史を綴っていく手法だ。本書はいわば幕末版紀伝体。坂本龍馬という人物を描きつつ、龍馬というスコー…

【2502冊目】網野善彦『日本中世の百姓と職能民』

日本中世の百姓と職能民 (平凡社ライブラリー) 作者:網野 善彦 発売日: 2003/06/09 メディア: 文庫 第1部「百姓」、第2部「職能民」の2部構成。論文を集成した一冊とのことで、一般向けというにはやや詳細で専門的なものも含まれている。 まずは「百姓」…

【2469冊目】岡田哲『明治洋食事始め とんかつの誕生』

明治洋食事始め――とんかつの誕生 (講談社学術文庫) 作者:岡田 哲 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/07/11 メディア: 文庫 いきなりですが、クイズです。次の料理を、誕生した順番に並べて下さい。いずれも明治維新以降の日本人が作り上げた傑作です。 …

【2462冊目】安丸良夫『神々の明治維新』

神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103) 作者:安丸 良夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1979/11/20 メディア: 新書 幕末から明治初期にかけて日本中を吹き荒れた「廃仏毀釈」とはなんだったのか。いや、そもそも、それまで習合していた…

【2456冊目】出口治明『哲学と宗教全史』

哲学と宗教全史 作者:出口 治明 出版社/メーカー: ダイヤモンド社 発売日: 2019/08/08 メディア: 単行本 だんだん出口治明という人がわからなくなってきた。ライフネット生命を立ち上げたベンチャー起業家であり、それが還暦になってからということで高齢者…

【2439冊目】磯田道史『殿様の通信簿』

殿様の通信簿 (新潮文庫) 作者: 磯田道史 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2008/09/30 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 39回 この商品を含むブログ (24件) を見る 歴史でも科学でもアートでも、その領域を深く追求する人と同様、その世界の面白さをうま…

【2430冊目】赤坂真理『箱の中の天皇』

箱の中の天皇 作者: 赤坂真理 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/02/13 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 前著『東京プリズン』で東京裁判と真正面から切り結んだ赤坂真理が、今度は「天皇」をメインテーマに据えた。しかも今度は、「…

【2412冊目】池波正太郎『英雄にっぽん』

英雄にっぽん (角川文庫) 作者: 池波正太郎 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 2007/05/01 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る ずいぶん大仰なタイトルだが、中身は中国地方の戦国武将、尼子家に仕えた山中鹿之助の生涯を描いた一冊。とかく…

【2407冊目】杉浦日向子『東のエデン』

東のエデン (ちくま文庫) 作者: 杉浦日向子 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1993/07/01 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 81回 この商品を含むブログ (25件) を見る 江戸を舞台にした作品が多い杉浦日向子だが、本書は幕末から明治あたりの、日本と西…

【2361冊目】唐木順三『千利休』

千利休 (筑摩叢書 6) 作者: 唐木順三 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1963/05 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る インスタグラムからの転載。 誰もが名前は知っているが、ではいったい何者だったのかと考えると、案…

【2340冊目】増田四郎『ヨーロッパとは何か』

ヨーロッパとは何か (岩波新書 青版 D-14) 作者: 増田四郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1967/07/20 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (10件) を見る 明治維新で日本はヨーロッパの文物を輸入し、習慣を取り入れ、文化を…

【2251冊目】吉村昭『生麦事件』

生麦事件〈上〉 (新潮文庫) 作者: 吉村昭 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2002/05/01 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 19回 この商品を含むブログ (16件) を見る 生麦事件〈下〉 (新潮文庫) 作者: 吉村昭 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2002/05/01 …

【2222冊目】赤松啓介『宗教と性の民俗学』

宗教と性の民俗学 作者: 赤松啓介 出版社/メーカー: 明石書店 発売日: 1995/07 メディア: ハードカバー この商品を含むブログ (1件) を見る 「深夜十一時ぐらいになって暗くなると、勤行につかれた人たちが後方とか、左右の横に寝具をとって休眠する。単独の…

【2216冊目】高橋洋一『ベル・エポックの肖像』

ベル・エポックの肖像―サラ・ベルナールとその時代 (小学館ヴィジュアル選書) 作者: 高橋洋一 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2005/12 メディア: 単行本 クリック: 5回 この商品を含むブログ (17件) を見る 国立新美術館の「ミュシャ展」はすばらしかった…

【2186冊目】吉田敦彦『日本人の女神信仰』

日本人の女神信仰 作者: 吉田敦彦 出版社/メーカー: 株式会社 青土社 発売日: 2012/10/10 メディア: オンデマンド (ペーパーバック) この商品を含むブログを見る 「現在の人類の宗教と神話は明らかに、万物の母である尊い女神として神格化された大地を崇める…

【2179冊目】山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』

ヴェーバーはキリスト教文化が内包する合理化の普遍性を一貫して強調したのです。そして、その普遍性にこそ恐るべき運命的な力が宿っていること、ここに警告を発していたのです(山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』)p.220 マックス・ヴェーバー入門 (岩…