自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

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【2842冊目】町田康『壊色』

壊色 (ハルキ文庫) 作者:町田 康 角川春樹事務所 Amazon これは小説? エッセイ? 日記? それとも詩? 分類不能の一冊です。 例えばこんな感じ。 「確かにそのような日々 石炭殻、風に舞うモノトーンの風景に 突然、フォルクスワーゲン出現する。 確かにそ…

【2841冊目】『フラナリー・オコナー全短編 上下』

フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫) 作者:フラナリー オコナー 筑摩書房 Amazon フラナリー・オコナー全短篇〈下〉 (ちくま文庫) 作者:フラナリー オコナー 筑摩書房 Amazon 一部、物語の結末に触れておりますので、ご注意ください。 ずいぶん前…

【2840冊目】ポール・ウィリス『ハマータウンの野郎ども』

ハマータウンの野郎ども ─学校への反抗・労働への順応 (ちくま学芸文庫) 作者:ポール・ウィリス 筑摩書房 Amazon 原題の「learning to labour」も素晴らしいが、邦題もおもしろいですね。本書のトーンとエッセンスがよく伝わるタイトルだと思います。 本書の…

【2839冊目】町田康『夫婦茶碗』

夫婦茶碗(新潮文庫) 作者:町田康 新潮社 Amazon 短編2つが入っています。「夫婦茶碗」は働かない夫が妻に言われていろいろ仕事をするがうまく行かない話、「人間の屑」はいろいろあって逃げ回らざるを得なくなったパンクロッカーの珍道中・・・・・・なのですが…

【2838冊目】アニー・ディラード『本を書く』

本を書く (ポケットスタンダード) 作者:アニー ディラード 田畑書店 Amazon ライティングメソッドの本では、ありません。 文章作法の本とも、違います。 これは、もっと根源的な、「書く生活」あるいは「書く人生」の要諦を綴った本なのです。 久しく絶版で…

【2837冊目】町田康『供花』

供花 (新潮文庫) 作者:康, 町田 新潮社 Amazon 先日読んだ『くっすん大黒』より先に出た、町田康の第一詩集です。 詩集、と言われて、どんな内容を連想するでしょうか。 どんなことであっても、この詩集を読めば、その想像は裏切られます。 たとえば・・・・・・ …

【2836冊目】小紫雅史『10年で激変する!「公務員の未来」予想図』

10年で激変する! 「公務員の未来」予想図 作者:小紫 雅史 学陽書房 Amazon この手の本を読むのは本当に久しぶりでした。この「読書ノート」を始めた頃に集中的に読んでいたのですが、あまりにも内容が薄く、また似たような本が多く、少々ヘキエキして遠ざか…

【2835冊目】町田康『くっすん大黒』

くっすん大黒 (文春文庫) 作者:町田 康 文藝春秋 Amazon 町田康のデビュー作ですが、いきなり物凄い。いったいどうして、どこからこういう小説が出てくるんでしょうか。 家に転がっていた金属製の大黒が不愉快なので捨てに行く。言ってみればそれだけの話な…

【2834冊目】山岸涼子『鬼』

鬼 (潮漫画文庫) 作者:山岸 凉子 潮出版社 Amazon 「怖い」というより「哀しい」一冊でした。 特に最初の「鬼」という作品ですね。飢饉にあえぐ江戸時代の東北で、口減らしのため穴に捨てられた子供たちと、その場所を訪れた現代の大学生たち。 穴に捨てられ…

【2833冊目】川端康成『古都』

古都 (新潮文庫) 作者:康成, 川端 新潮社 Amazon 不思議な小説です。古都・京都の風物を背景に、千重子と苗子という幼い頃生き別れた双子の再会と交流を描いているのですが、読み終わって印象に残るのは、なぜか、背景のはずの京都の祇園祭やチンチン電車や…

【2832冊目】トルーマン・カポーティ『カポーティ短篇集』

カポーティ短篇集 (ちくま文庫) 作者:トルーマン カポーティ 筑摩書房 Amazon 文庫オリジナルの短篇集とのことです。エッセイや旅行記に近いものから、やや長めの読みごたえのある作品までバランスよく収められています。 文章がいいですね(もちろん翻訳も…

【2831冊目】アランナ・コリン『あなたの体は9割が細菌』

あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた (河出文庫) 作者:アランナ・コリン 河出書房新社 Amazon 本書は人体内部の「細菌」を主人公とした一冊です。人間の体質や行動、病気を決めているのは、DNAよりむしろ共生する細菌たちだった、というシ…

【2830冊目】マーク・オーエンス&ディーリア・オーエンス『カラハリが呼んでいる』

カラハリが呼んでいる (ハヤカワ文庫NF) 作者:マーク オーエンズ,ディーリア オーエンズ 早川書房 Amazon 本書は、先日読んだ『ザリガニの鳴くところ』の著者ディーリア・オーエンスが、夫のマークとともに若き日々を過ごした7年間の記録です。その舞台は、…

【2829冊目】松田行正『眼の冒険』

眼の冒険 ――デザインの道具箱 (ちくま文庫) 作者:松田 行正 筑摩書房 Amazon 直線、面、形、文字。 ありとあらゆる視覚情報をこきまぜて、「見えること」と「見ること」の間隙を突く一冊です。 ★★★ まずは「相似」の話から。 雑誌『遊』で展開された「似たも…

【2828冊目】アンソニー・ホロヴィッツ『ヨルガオ殺人事件』

ヨルガオ殺人事件 上 (創元推理文庫) 作者:アンソニー・ホロヴィッツ 東京創元社 Amazon ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫) 作者:アンソニー・ホロヴィッツ 東京創元社 Amazon 前作『カササギ殺人事件』では、前代未聞の「入…

【2827冊目】泡坂妻夫『しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術』

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫) 作者:妻夫, 泡坂 新潮社 Amazon 著者は推理小説家にしてマジシャンとして知られる作家ですが、本書はどちらかというと「マジシャン」としての手際があざやかな一冊です。 推理小説の中には、トリックの…

【2826冊目】ディーリア・オーエンス『ザリガニの鳴くところ』

ザリガニの鳴くところ 作者:ディーリア・オーエンズ 早川書房 Amazon 世界中で1000万部以上売れたという本書は、なんと70歳の動物学者が書いた初めての小説だそうです。 でも、それも読んで納得。 確かにこれは、動物学者でなければ書けない小説です。 ★★★ …

【2825冊目】吉村萬壱『ボラード病』

ボラード病 (文春文庫) 作者:吉村萬壱 文藝春秋 Amazon 村田沙耶香『地球星人』を紹介した際、ある人からオススメいただいた一冊。やっと読めました。 『地球星人』を受けてのリコメンドという時点で、相当ヤバいことが想像されるわけですが、 読んでみたら…

【2824冊目】國分功一郎『中動態の世界』

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく) 作者:國分功一郎 医学書院 Amazon ケアをめぐる良書を量産されておられる「シリーズ ケアをひらく」の一冊です。とはいえ、内容はかなりガチの思想書、あるいは思想史に近いものになっています。…

【2823冊目】小山聡子『もののけの日本史』

もののけの日本史-死霊、幽霊、妖怪の1000年 (中公新書) 作者:小山 聡子 中央公論新社 Amazon もののけ(本文中では「モノノケ」)と言えば、多くの人が思い出すのは映画『もののけ姫』でしょう。 でも、そもそも「モノノケ」ってなんなんでしょうか。 この…

【2822冊目】遠藤周作『海と毒薬』

海と毒薬(新潮文庫)作者:遠藤周作新潮社Amazon 戦時中に起きた米軍捕虜の生体解剖実験を扱った、遠藤周作の代表作のひとつです。本書に出てくる人々はみな、どこか不気味です。生体解剖というとんでもないことをしようとしているのに、全員が「なんとなく…

【2821冊目】宇佐見りん『かか』

かか (河出文庫) 作者:宇佐見りん 河出書房新社 Amazon 『推し、燃ゆ』が芥川賞となった宇佐見りんさんのデビュー作です。 そういえば最近、最新作も出ましたね。 この現代日本で、新刊がこんなに話題になる作家なんて、他には村上春樹くらいなのではないで…

再開に向けた口上、というか言い訳

ええと、3ヶ月ぶりくらいでしょうか。久々に、再開したいと思います。3ヶ月間、何をしていたかと言いますと、インスタに走ってみたり、ツイッターの読書垢を作ってみたり、読書メーターをいじってみたり、noteに手を出してみたり、まあとにかくあれこれ試…

【2820冊目】伊藤亜紗・中島岳志・若松英輔・國分功一郎・磯崎憲一郎『「利他」とは何か』

「利他」とは何か (集英社新書)作者:中島岳志,若松英輔,國分功一郎,磯崎憲一郎集英社Amazon 「利他」が、コロナ禍で注目を集めているという(ホントに?)。でも、利他って一体なんなのか。今もっとも脂の乗った5人の論者による論考。とにかくメンバーがめ…

【2819冊目】ロバート・L・スティーヴンソン『ジキルとハイド』

ジキルとハイド (新潮文庫)作者:ロバート・L. スティーヴンソンShinchosha/Tsai Fong BooksAmazon 小学生の頃に児童書バージョンで読んで以来でしょうか。もっとも、読んだことはなくても、ほとんどの人がどういう話か知っているという意味では、文学史上も…

【2818冊目】凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』

滅びの前のシャングリラ作者:凪良ゆう中央公論新社Amazon 1か月後に地球に小惑星が激突し、人類が絶滅する世界での物語。似たような設定で思い出すのは伊坂幸太郎『終末のフール』だが、あちらは年単位の猶予があったので、どこか静かで達観した印象があっ…

【2817冊目】小川三夫『棟梁』

技を伝え、人を育てる 棟梁 (文春文庫)作者:小川 三夫文藝春秋Amazon 本当に大事なことだけが詰まった、ホンモノの仕事論。本当に大事なことは、言葉で伝えるのは不可能だ。だから、本書は「伝え方」自体を教える本になっている。聞き書きの名手、塩野米松さ…

【2816冊目】ラフカディオ・ハーン『小泉八雲東大講義録』

小泉八雲東大講義録 日本文学の未来のために (角川ソフィア文庫)作者:ラフカディオ・ハーンKADOKAWAAmazon 明治時代、お雇い外国人として東京帝国大学で教えていたラフカディオ・ハーンの講義録である。ハーンといえば『怪談』の著者小泉八雲であるが、本書…

【2815冊目】姫野カオルコ『昭和の犬』

昭和の犬 (幻冬舎文庫)作者:姫野カオルコ幻冬舎Amazon しょっちゅう理不尽な怒りをぶちまける(本書では「割れる」と表現。うまい言い方だ)シベリア帰りの父と、自分の娘のこととなるとこれっぽっちも認めない母のもと、昭和33年に生まれた柏木イク。いささ…